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最後の特攻船

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最後の特攻船

ロシアと国境を接する最果ての港町・根室で戦後から平成の初期まで続いた密漁ビジネスを、地元ヤクザの元組長が自らの人生とともに赤裸々に描く衝撃のドキュメント。
 根室で三代続く昆布漁師の父と、国後島から引き揚げてきた母のもとに生まれた著者は、幼い頃から昆布漁を手伝いながら育った。北方領土周辺は水産資源の宝庫であったが、ソビエトに実効支配された後は、この水域での漁は「密漁」と見なされた。その抜け道として昭和40年代後半に生まれたのが「レポ船」だ。レポとは「報告」の意味で、日本の情報や家電製品を賄賂としてソビエトに渡す代わりに密漁を黙認させる取引だった。この大型漁業船の登場により、根室の町は好景気に沸いた。
 しかしソビエト崩壊で顔が効かなくなり、レポ船は消滅する。次に登場した「特攻船」は、小型船舶に高出力エンジンを何機も積んだ改造船だ。密約ではなく速力を武器に、ウニやカニを漁ると警備艇から全速力で逃げ帰る。特攻船は莫大な利益を生み、根室に活気が蘇った。特攻船景気に目をつけた道内や本州のヤクザ組織が続々と小さな港町に事務所を構え、特攻船ビジネスに参入。夜の街や賭場でも現金が飛び交った。
 甲子園の夢に破れ高校を中退した著者は、漁師のアルバイトをしながら暴走族に入りテキ屋稼業へと踏み込んだ。そんな折、地元の漁師から「特攻船の船頭をやらないか」と声をかけられる。特攻船の所有者はヤクザが多かったが、船頭は海底の地形や潮の流れを熟知した地元漁師にしか務まらない。根室の人々の胸の奥には「島を奪われ、海も奪われた。元々自分たちの漁場で漁をして何が悪いんだ」という思いもあった。こうして著者は「稲川会二代目林一家荒木組根室支部岩崎組」の組長として自前の特攻船を持ち、抗争や発砲事件など修羅場をくぐりながらも、一国一城の主として充実した日々を送ることになった。
 しかし特攻船も時代の流れには勝てなかった。ロシア警備艇の対応はかつての照明弾や高圧放水から実弾攻撃へとエスカレートしていく。平成6年10月4日、著者は友人と2艘で歯舞群島へ漁に出た。大漁の網を引き揚げ始めた矢先にロシア警備艇に発見され、体当たりをかわすうちに機関砲で船体を撃ち抜かれた。「もうダメか」と思った瞬間、根室港の灯りが一斉に消えた。震度6、北海道東方沖地震の発生だった。友人の船は沈み、著者は命からがら帰還した。
 この事件を機に、残っていた他の特攻船は次々と姿を消した。ロシアと海上保安庁の双方に狙われるようになった著者も、「若い衆が死んだら親に顔向けできない」という思いから特攻船を降り、船を売って水産加工会社を興した。特攻船の消滅とともに、根室のヤクザ組織もひとつまたひとつと街を去り、最後まで残った岩崎組も、令和に入り著者の引退とともにその幕を閉じた。
 ヤクザと市民が共存共栄し、密漁で港町が繁栄した時代――なぜ根室の人々は特攻船を黙認し、歓迎したのか。本書はこの国の戦後を内側から描いた、唯一無二の証言録である。
$12.25
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ロシアと国境を接する最果ての港町・根室で戦後から平成の初期まで続いた密漁ビジネスを、地元ヤクザの元組長が自らの人生とともに赤裸々に描く衝撃のドキュメント。
 根室で三代続く昆布漁師の父と、国後島から引き揚げてきた母のもとに生まれた著者は、幼い頃から昆布漁を手伝いながら育った。北方領土周辺は水産資源の宝庫であったが、ソビエトに実効支配された後は、この水域での漁は「密漁」と見なされた。その抜け道として昭和40年代後半に生まれたのが「レポ船」だ。レポとは「報告」の意味で、日本の情報や家電製品を賄賂としてソビエトに渡す代わりに密漁を黙認させる取引だった。この大型漁業船の登場により、根室の町は好景気に沸いた。
 しかしソビエト崩壊で顔が効かなくなり、レポ船は消滅する。次に登場した「特攻船」は、小型船舶に高出力エンジンを何機も積んだ改造船だ。密約ではなく速力を武器に、ウニやカニを漁ると警備艇から全速力で逃げ帰る。特攻船は莫大な利益を生み、根室に活気が蘇った。特攻船景気に目をつけた道内や本州のヤクザ組織が続々と小さな港町に事務所を構え、特攻船ビジネスに参入。夜の街や賭場でも現金が飛び交った。
 甲子園の夢に破れ高校を中退した著者は、漁師のアルバイトをしながら暴走族に入りテキ屋稼業へと踏み込んだ。そんな折、地元の漁師から「特攻船の船頭をやらないか」と声をかけられる。特攻船の所有者はヤクザが多かったが、船頭は海底の地形や潮の流れを熟知した地元漁師にしか務まらない。根室の人々の胸の奥には「島を奪われ、海も奪われた。元々自分たちの漁場で漁をして何が悪いんだ」という思いもあった。こうして著者は「稲川会二代目林一家荒木組根室支部岩崎組」の組長として自前の特攻船を持ち、抗争や発砲事件など修羅場をくぐりながらも、一国一城の主として充実した日々を送ることになった。
 しかし特攻船も時代の流れには勝てなかった。ロシア警備艇の対応はかつての照明弾や高圧放水から実弾攻撃へとエスカレートしていく。平成6年10月4日、著者は友人と2艘で歯舞群島へ漁に出た。大漁の網を引き揚げ始めた矢先にロシア警備艇に発見され、体当たりをかわすうちに機関砲で船体を撃ち抜かれた。「もうダメか」と思った瞬間、根室港の灯りが一斉に消えた。震度6、北海道東方沖地震の発生だった。友人の船は沈み、著者は命からがら帰還した。
 この事件を機に、残っていた他の特攻船は次々と姿を消した。ロシアと海上保安庁の双方に狙われるようになった著者も、「若い衆が死んだら親に顔向けできない」という思いから特攻船を降り、船を売って水産加工会社を興した。特攻船の消滅とともに、根室のヤクザ組織もひとつまたひとつと街を去り、最後まで残った岩崎組も、令和に入り著者の引退とともにその幕を閉じた。
 ヤクザと市民が共存共栄し、密漁で港町が繁栄した時代――なぜ根室の人々は特攻船を黙認し、歓迎したのか。本書はこの国の戦後を内側から描いた、唯一無二の証言録である。

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